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実践グループの取組紹介

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2025.04.08

福山のデニム企業が一体となった取組で生産のみならずアップサイクルも日本一をめざす

─[環境に配慮した取組]────────────────────────────────────
アップサイクル・リサイクル
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─[事業内容]─────────────────────────────────────────
家庭で不要になったデニム製品を回収し、再資源化、新たな製品としてアップサイクルすることで、廃棄物の削減や有効活用などを促進することをめざすプロジェクト
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━━━\\\ ここがグリーンなポイント! ///━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1. 地域内の企業が連携し、デニム製品を回収する仕組みを構築
2. 回収したデニムを反毛・紡績して糸に再生し、生地として活用
3. 企業の意識向上につながり、回収拠点が継続的に拡大中

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回収開始1か月で100kg以上

日本一のデニム生産量を誇る福山市。篠原テキスタイル株式会社や山陽染工株式会社、中国紡織株式会社、株式会社C2、株式会社かこ川商店、株式会社ディスカバーリンクせとうち、天満屋 福山店、iti SETOUCHI、株式会社ハシモト、福山市などが連携し、デニム製品の回収とアップサイクルに取り組んでいます。

2024年3月から通年で回収が始まり、最初の1か月間だけで100kg以上ものデニム製品(297点)が集まりました。

これらを反毛後(古くなった衣類や布製品をほぐして繊維の状態に戻した後)に糸として再生し、新しい生地を織り上げることで、地域内で生産から回収、再生産まで一貫して循環させる試みが進んでいます。

さらに、金属付属品などの廃材はワークショップ用素材として有効活用され、資源の無駄を減らすだけでなく、地域企業間の結びつき強化や新たなビジネスチャンスの創出にも貢献しています。

iti SETOUCHIの回収ボックス(写真提供: iti SETOUCHI)

デニム生産量が日本一である福山市で「作るだけで良いのか」という疑問を抱き、循環への責任を果たしたいと考えた篠原テキスタイル株式会社 代表取締役社長の篠原由起(しのはら ゆうき)さんが2024年2月に声をかけたことが始まりです。篠原さんは「地域全体で回収量も日本一にできれば、つくり手としての責任が果たせるのではないか」と語ります。

2020年ごろからデニムパンツを回収して新たな服を作るプロジェクトへの協働など、これまでも様々な形でアップサイクルに取り組んでいましたが、より大きな循環を地域で起こすために、今回の取組を本格化させました。

アップサイクルプロジェクトの会議風景(篠原さんは中央奥)

服を作るだけで終わらない“デニム再生プロジェクト”が始まったことが成果

取組をはじめた1か月間で297点・100kg以上ものデニム製品を回収し、連携先のクラボウ安城工場へ運び反毛・紡績を実施しました。

反毛した繊維20%に、新しい綿80%を混ぜて糸を紡ぎ、広幅の生地を500m分製造し、ジーンズなら約300本に相当する見込みです。

回収したデニム製品から紡績された糸

今後はこの再生生地を地域企業の制服やノベルティとして活用する計画があり、服を「作るだけ」で終わらせない新たな循環モデルとして注目されています。

さらに、興味を持つ企業から問合せが増え、回収拠点も8カ所に拡大。地域内外での関心も高まっています。

安定した循環モデルの構築へ ― 分別作業から製品展開までの課題に挑む ―

<金属付属品の分別と除去>
回収デニムに金属パーツが混入していると再生工程に支障をきたすため、株式会社C2が目視点検や金属探知機を活用して取り除くフローを追加しました。

回収デニムを人力で断裁しているところ

最初は金具の混入で一度送り返しの手間が発生しましたが、現在は各拠点でも取り外しの注意喚起を行い、トラブルを減らしています。

<出口戦略の模索>
生地を作った後の製品化は、参加企業の試行錯誤が続いています。

現段階では地域企業の制服・ノベルティとしてのグッズ製作などが候補となっており、今後さらなるマッチングを進めることで、安定的な販売と回収のサイクルをめざす方針です。

<分別作業の機械化検討>
今後、回収量が増加すると手作業での分別では対応しきれない可能性があり、機械導入のコストと効果を検討しています。

現時点では各社が費用を自己負担しながら「未来への投資」として実験的に取り組んでおり、必要に応じて協力体制を強化する方針です。

会社間に生まれたつながりと社員に芽生えた使命感

この取組を通じて、参加企業の社員からは「デニム製造の背景を一人ひとりが改めて理解し、ものづくりの先にある循環を考えるきっかけになった」という声が上がっています。

株式会社C2がバラした金属付属品や端材を株式会社かこ川商店の廃材ワークショップで再利用するなど、新たな連携も生まれました。

廃材ワークショップで製作された作品(写真提供:かこ川商店)

福山市がデニム製品の生産量日本一と、回収量日本一であることを世界中から認知されている状態をめざす

篠原さんは「生産量が日本一の福山市だからこそ、回収量でも日本一になれれば、世界中から認知される大きなチャンスになる」と期待を寄せています。

今後は再生生地で作る製品の開発や、市民の購買行動が変わるような啓発活動にも力を入れ、繊維の循環都市をめざす方針です。

産地・業界内の連携により実現した取組

回収デニムの反毛と糸の紡績はクラボウ安城工場と連携し、専門的な技術・設備を活用して実現しました。

当プロジェクトは産地内においても、行政から製造元・店舗まで11団体が連携した取組です。

このネットワークは広がる兆しがあり、今後も拡大して、福山市がデニム製品の回収量日本一となり、話題になることが期待されます。


※本記事内容は2025年3月取材時の情報です。